今村夏子『こちらあみ子』読んだら人間の黒さに引いた

芥川賞作家・今村夏子さんのデビュー作『こちらあみ子』を読んだ。

 

収録されている『こちらあみ子』『ピクニック』『チズさん』のあらすじ・考察・感想レビューを残す。

 

ネタバレありなので、読み終わった方や、読む予定ないけど内容が気になっている方はぜひ!

 

 

 

今村夏子『こちらあみ子』を読んで

 

ついに『こちらあみ子』を読んでしまった。

 

むらさきのスカートの女』に続き、「今村夏子さんすごすぎる…」と読んでしばらく放心した。

 

とんでもない読書体験だったので、忘れないうちに「ざっくりしたあらすじ」「個人的な考察」「感想レビュー」を残しておく。

 

\『むらさきのスカートの女』の感想はこちら/

【感想と考察】今村夏子「むらさきのスカートの女」が不気味すぎる

 

『こちらあみ子』のあらすじ

 

『こちらあみ子』のあらすじはこんな感じ。

 

こちらあみ子

 

発達障害のようなふしのあるあみ子は、無垢でピュアで、限りなく自然に近い女の子。

 

あみ子には、いわゆる“普通の人”がどう映っているのか?

 

あみ子を取り巻く家族や友達との関係性が、三人称で描かれる。

 

『こちらあみ子』考察・感想レビュー

 

『こちらあみ子』考察・感想レビュー

 

もしふだん街であみ子みたいな人のことを見かけたら、私も小説に出てきた“普通の人”みたいに、あみ子のこと不自然に感じちゃうかもしれない。

 

でもあみ子の視点から見ると、私の方がよっぽど不自然な存在に見えている。

 

あみ子には、憧れる部分も多い。

 

たとえば、抜けた歯の跡地を「舌でなぞるのが心地いいから」でそのままにしちゃうところとか。

 

私はいつからか「歯をキレイにしていないと社会人として失格だ」とか「異性にも嫌われる」みたいな刷り込みで、歯の見栄えを大事にしはじめた。

 

抜けた歯でも自分が心地よければ、誰がどう思おうと別にそのままでいいはずなのに。

 

人間、あみ子みたいに、きのみきのまま生きていいはずなのに、いつからそれが難しくなったんだろう?

 

月や地球や植物が「人間の歯並びのキレイさ」なんていちいち気にしないみたいに、あみ子も気にしない。私にとってあみ子は、月や地球や植物と同じように感じられた。

 

つまり、社会に適合してうまくやっている“普通の人”が、いかにくだらないことに固執しすぎた視野の狭い人間であるかを、あみ子が思い出させてくれる気がした。

 

『こちらあみ子』収録『ピクニック』を読んで

 

ピクニック

 

『ピクニック』は、映画『花束みたいな恋をした』で知った人も多いかも?

 

「ピクニックを読んでもなにも感じない人」とはどういうことなのか、考察していきたい。

 

『ピクニック』のあらすじ

 

ピクニック

 

30代前半?くらいで、脇にあざのようなものがある、おそらく陰キャな「七瀬」がイケイケなガールズバーで働き始める。

 

なにも考えずに一読すると、そこで以前から働いている陽キャな女の子集団「ルミたち」と七瀬とのハートフルな話とも読めるけど…

 

じつは、裏を読むと「表面上は仲良しに見せかけて七瀬のことをからかっている」という構図になっている。(怖すぎ…)

 

『ピクニック』の考察・感想レビュー

 

『ピクニック』の考察・感想レビュー

 

こちらも三人称で描かれているけど、語り手が「七瀬はイジメにあっている」なんて一言も言わない。ただ読むと「仲良しグループの日常」に思えるから怖いのだ。

 

表・裏どちらの読み方をしても真実を言っているのは、七瀬のあとに入ってきた新人だけ。新人の発言に注意して読むことで、裏読みができるようになっている。

 

映画『花束みたいなみたいな恋をした』で有村かすみ演じる絹ちゃんが言った「ピクニックを読んでも何も感じない人」とは、ただの「仲良しグループの日常」だと思った人。

 

つまり「裏読み・深読みができない浅い人間」「繊細な感情をつかめないデリカシーのない人間」といいたいのだと思う。サブカルマウントの新しい表現方法ですね。

 

『こちらあみ子』収録『チズさん』を読んで

 

本の最後の短編『チズさん』のあらすじ・考察レビューです。

 

『チズさん』のあらすじ

 

『こちらあみ子』収録『チズさん』を読んで

 

あえて自分で動けなくて判断も鈍っているおばあさんを狙って不法侵入って…

 

単純に、ゾッとする話じゃないか…

 

『チズさん』考察・感想レビュー

 

『チズさん』考察・感想レビュー

 

(30にもなって「短い」の字を間違えてて恥ずかしい…多分このさき一生間違え続けますスミマセン)

 

『チズさん』めちゃくちゃ怖い話なんだけど、「ちゃんと顔出してますよ感」を出すためだけにたま〜〜に様子見にくる本物の家族と、毎日お話し相手になってチズさんの心の友状態になっている“私”、どちらがチズさんに寄り添っているか?と言われたら、後者であることは間違いない。

 

一言で「怖い話」と片付けられたらラクなのに、そうはさせてくれないのが今村夏子さんのすごさなんだよな…

『こちらあみ子』の解説が刺さる

 

本の後半に書かれている、町田康さんと穂村弘さんの解説にうなったので、それも載せておきます!

 

こちらあみ子

 

あみ子のような一途な人は、バランスを取れないから社会に適合できない。

 

つまり社会でやっていけてる人は、バランスをとることに重きを置いている一途でない人。

 

私を含めたその他大勢の“普通の人たち”も、本質的にはあみ子のような一途さを持ち合わせているはずだけど、いつからか「常識に合わせること」や「空気を読むこと」、「バランスをとること」が上手くなって、社会に適合できちゃってるだけ。

 

適合できちゃった自分が浅はかで悲しくなるし、ちょっと悔しい。

 

それにしても、今村夏子さんという人はなんて本を書くんだろう…

 

ずっと掻き乱されっぱなしで、本当に最高なんだが!