2020年3月15日(日)~9月27日(日)まで 横浜駅直結の複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」で開催されているバンクシーの展示「バンクシー展 天才か反逆者か」を見に行ってきたのでレビューします!
もくじ
バンクシーとは?
バンクシーはイギリスを拠点に匿名で活動する神出鬼没のアーティスト。
もともとミュージシャンとのコラボをしてジャケットのグラフィティをやっていたようですが、社会批評する風刺ストリートアートを世界各地に残していることが話題になって知ったという方は多いとおもいます。
匿名で世界中にアートを残す謎めいた存在と、胸にグサッと刺さる風刺アート、おしゃれなステンシル技法(型を使って絵をプリントする装飾の方法)が人気です。
バンクシーの絵はストリートや橋などの壁面に描かれることが多いため、すぐに塗りつぶされたり移動させられてしまいます。
なので、たくさんの作品を一挙に見られる展示は貴重ですよね。
バンクシー展の感想
出典:バンクシー展公式
少女の手元からハート型の風船がふわっと離れていくシーンを描いた作品「ガール・ウィズ・バルーン」が、落札直後にシュレッダーにかけられたというニュースを見たときは衝撃を受けました。
バンクシーという人は、アートを書くだけで終わりではなく、人の人生を左右するような体験をアートで表現できる、真のアーティストだとおもいました。
バンクシーは、なにやら世の中の仕組みに違和感や怒りを覚えているようです。自分自身を商業化(ブランド化)して伝えたいことを効果的に表現することで、結果的に問題意識をアートを見たすべての人に植え付けることに成功しています。
人間が何にも違和感も持たずに当然のように便利で秩序のある暮らしをしているなかで、人間のピュアな本質や健康、安全に暮らせる環境などを守ったまま、資本主義・戦争・権力・政治など今あるすべての社会問題に平和的な解決を求めている人なんだとおもいます。
私を含め、バンクシー展に足を運んだお客さんが一生懸命スマホで作品の写真を撮る。この行為こそ、バンクシーにとって一番皮肉めいた事象だと捉えているかもしれません。私たちは、「バンクシー」というブランドに価値を感じる耳の早い“パパラッチ”ですね。
「バンクシー展」のみどころ&気になる作品
気になる作品をいくつかピックアップしてご紹介。
特徴的な展示の方法もご紹介します!
ケイト・モス
アンディ・ウォーホルの「マリリンモンロー」を模した作品。
人々はアートの価値よりも流行に価値を見出しているという“消費アート”の代表作を、現代の人気女優に見立てています。
ほかにも「小さなネズミ」と呼ばれるバレリーナを描いた、エドガー・ドガの「踊り子」を模した作品などもありました。
バンクシーが他のアートにアートを重ねることで、皮肉めいた原作のイメージがもっと際立って見えた気がします。
消費
バンクシーは、消費社会に対してかなり怒っています。
「消費」は、本来祈りを捧げるためのクリスマスが、高価なプレゼントを渡す儀式へと変わってしまったことを風刺した作品。
十字架にくくりつけられたキリストが、意図しないところで消費社会の象徴になっています。人間の消費行動や経済活動を皮肉る作品がかなり多いとおもいますが、私もまったくその通りだとおもいます。
この世にあったほうがいい仕事や人間が持っていた方がいいモノは本当は少ししかなくて、人間の欲求だけが経済の原動力・目的となっているような気がするのです。
モンキー・パーラメント

バンクシー作品には猿やネズミがモチーフになることが多いようで、猿=欲深い人間(動物的・野生的)、ネズミ=社会的弱者として描かれることが多いように感じました。
(人間の皮をかぶった)猿たちが、バナナを片手に怒り新党議論している姿が描かれています。
コロナが流行ったことで国会を見る機会も増えましたが、まさにこんな感じw 知性的に話しているようで、バナナのことしか頭にないというか。
そしてそれをツイッターであーだこーだつぶやく私は、猿でありネズミなんだなとおもいました。
ナパーム弾

多分私が一番衝撃を受けた作品だとおもいます。
ベトナム戦争で使用されたナパーム弾をイメージした作品で、戦時中に撮影されたこちらの写真を模しているとおもわれます。

ナパーム弾は、広範囲に強力な破壊力と燃焼力をもつ爆弾のようで、罪のない丸腰の子どもにもたくさんの被害が出ました。
バンクシー作品では、このショッキングな写真に映る少女の両サイドに、資本主義のアイコンが配されています。

警察官が「オズの魔法使い」の主人公・ドロシーの荷物を探る、権力行使の風刺画「ストップ・アンド・サーチ」にも通づるように、兵士や警察官は安全・自由とはかけ離れた存在です。
「本当の正義とはなんなのか?」とてもシンプルなことだけど、資本主義社会がいうところの正義が本当の正義なのかを、改めて考える必要があるとおもいます。
ディズマ・ランド

2015年、バンクシーは、夢の国・ディズニーランドを皮肉ったテーマパーク「ディズマ(Dismal:憂うつな)ランド」を期間限定で開催したようです。
死体のシンデレラをメディアがパパラッチしている展示や、体が歪んでいるアリエルの展示など、ディズニーランドをひっくり返したような憂うつな世界観が展開されました。
「バンクシー展」では、イベントを撮影した写真や動画が見れるようになっていました。これも、ディズニー好きにとっては結構ショッキングでインパクトに残る展示なのではないでしょうか・・?
ザ・ウォールド・オフ・ホテル
バンクシーによって2017年にパレスチナに建てられたホテル「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」の客室を再現した展示もありました。
ホテル名はNYにある高級ホテル「ウォルドルフ=アストリア」を皮肉っていて、「壁で分断されたホテル」という意味を持ちます。
隔離壁のそばで暮らすことが、パレスチナ人にとってどのような苦痛であるかを伝えることがテーマのようです。
壁には兵士がふわふわの枕で闘うアートが飾られていて、バンクシーの有名な作品「ラブ・イズ・イン・ジ・エアー」を想起させるようです。
館内にはパレスチナとイスラエルの争いの歴史をたどる博物館が併設されていて、博物館は宿泊者でなくても入れます。
フォトスポット
バンクシー展にはいくつかフォトスポットがあります。
バンクシー展に来た人はもれなく映える写真をどんどん撮影&拡散して、社会問題をたくさんの人が考えるきっかけづくりに結果的に貢献することになればいいなとおもいます。
横浜「バンクシー展」の料金・コロナ対策など概要
コロナウィルスの影響で展示を一時中止していましたが、5月から再開しています。チケット料金は平日大人1,800円、休日大人2,000円で、オンラインで購入できます。
コロナ対策として、30分あけての入場制限あり、消毒、換気(扇風機のめちゃくちゃあって寒いw)がされていました。土日だと人は多いし、順路も自由(?)な感じで入り乱れているので、コロナ対策が十分かどうかはちょっと疑問です。
音声ガイドは無料!作品の解説をウェブ上で聞くこともテキストで読むこともできるようになっていました。コロナが心配な方は、展示に行かずに家で解説を見るだけでも十分楽しめるとおもいます。
作品を見ながらテキストを読むのはなかなか大変なので、個人的にはリスニングがおすすめです。イヤホンをお忘れなく!
写真撮影は全面OK。家に帰ってからも余韻に浸りたい方にとってうれしいですよね。