71〜105歳の作品が集結!「アナザーエナジー展」感想レビュー【森美術館】

六本木・森美術館で2021.9.26(日)まで開催中の「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」。久しぶりに美術展示にいってきたので(やっとだ・・)、展示のみどころや感想・レビューを残します!
 


 

世界の“おばあちゃん”の作品が集まる「アナザーエナジー展」

 

世界の“おばあちゃん”の作品が集まる「アナザーエナジー展」

 

「アナザーエナジー展」は、世界14カ国で挑戦を続ける70代以上(71歳〜105歳)の女性アーティスト16名の作品を集めた展示。

 

絵画・映像・彫刻・インスタレーション・パフォーマンスなど約130点のパワフルな作品が集まっていました。

 

私はおばあちゃんっ子ということもあって、美術館が再開したら必ず行きたいと思っていました。

 

現代アートといえば若いアーティストのイメージが勝手に先行しがちでしたが、年齢を重ねているからこそ表現できる作品ばかりで、また新たな視点が広がる展示でした。

 

「アナザーエナジー展」で心に残った作品TOP3

 

展示のなかで、個人的に気になった作品をTOP3で発表します!

 

TOP3:宮本和子 「黒い芥子」

 

黒いけし

黒いけし

 

目に入った瞬間、「美しい・・!」と心をつかまれました。

 

無駄なものを排除した“研ぎ澄まされたインスタレーション”が特徴的で、見ていて気持ちいい。

 

じっと見てもよし、角度を変えて見るとなおよし。

 

糸と釘だけで人の心をここまで動かせるものかと、感動しました。

 

TOP2:アンナ・ベラ・ガイゲル「こんなふうに感じる」

 

アンナ・ベラ・ガイゲル「こんなふうに感じる」

 

展示のフライヤーにもなっているアンナ・ベラ・ガイゲルさんの作品。

 

私は特にこの作品が印象的でした。

 

基本的に人間が描かれている絵画作品なんだけど、何がすごいって、彼女の絵からは「人の体温」が伝わってくるんです!!!

 

口元とオーラが青っぽくなっていて、耳は真っ赤。

 

これだけで、この人を取り巻くいろんなドラマが想像できます。

 

なんらかの「嫌ぁ〜な情報」を見聞きしたけど、口に出せない事情があるのか・・?

 

そう考えると、頭にうっすらまとわりつくオーラは「怒り」だったり「寂しさ」、「不安」にも見えてきます。

 

それに、「こんなふうに感じる」ってタイトルもいいと思いました。

 

「不安」「悲哀」「苛立ち」とか具体的な感情の名前を使わずに、感情のグラデーションの余白を残して鑑賞者にゆだねている。

 

一見、ぶっきらぼうでテキトーな感じがするけど、これ以上ない言葉で(!)絶妙なニュアンスで(!)表現されていると思いました。

 

TOP1:三島喜美代「92-N」

 

TOP1:三島喜美代「92-N」

TOP1:三島喜美代「92-N」

 

高く積み上がった、不要になった新聞・雑誌などの山・・

 

実はこれ全部「陶器」なんです!!!

 

大量生産・大量消費へのアンチテーゼを、同じように大量・ダイナミックなゴミアートで表現するという大胆な手法に目を奪われました。

 

ゴミを割れやすい陶器にすることで、情報がいかにもろいか、刹那的であるかが伝わってくるようです。

 

「一生、命かけて遊んでる。ゴミを大量につくってる」という三島さんのコメントにもグッときました・・

 

何十年もピュアな気持ちでアートと向き合えるのも素敵だし、現代社会への警鐘を大きな声(大胆な作品)でガンガン鳴らしてるのもカッコいいなと。

 

さんざん夢中になって体も酷使してつくったのに、「別に作品が割れてもいいよ」って後腐れない感じもいさぎよくてカッコいいし

 

他者を気にしてウジウジしてるような私には、三島さんのパワフル・ワイルド・自由な作品とその姿勢が「これでもか!」というほどにまぶしくて、グサグサと刺さりました。

 

「アナザーエナジー展」の感想

 

「アナザーエナジー展」の感想

 

表現に年齢や性別は関係ないし、人間はずっとパワフルでワクワクできるものなんだと感じました。

 

私はおばあちゃん作家の佐藤愛子さんの本を一時期好きで読んでたのですが・・

 

おばあちゃんといえば「のび太くんのおばあちゃん」みたいな、ニコニコしてて温厚でやさしい人を想像するけど、佐藤愛子さんは全然やさしくないし、基本的にずっといろんなことに怒ってるんです。

 

社会だったり身近な家族のことだったり若者に対してだったり、とにかくあらゆることにご立腹。

 

だけど、「戦争も経験した」「すいも甘いも知り尽くした」「経験は深まって自分軸も定まった」「しかしもう先が長くない」「死を意識する」のような感情からか、人間や社会に対して“一種の諦め”のようなものを感じる。

 

その結果ものごとを俯瞰して捉える姿勢になり、それが若い人の背中を押す。

 

“諦める”っていうと普通は「ネガティブな言葉」に捉えられるけど、私は「ポジティブな言葉」にも思えます。

 

色々やってみてそれでもどうにもならないことが世の中にはあって、いちいち全てに構っていられないし、”諦める”というのは渦中からスッと身を引いて、達観した心で”許す”ということでもあるからです。

 

今はまだ全くその境地にいないし、現役バリバリであらゆることに「諦めねーぞ!!!」って必死で食らいついてる年齢だけど、おばあちゃんのような「一歩引いてものごとを捉える」ことは本来必要なことだと思います。

 

だから私はおばあちゃんが好き。

 

おじいちゃんが好き勝手やってても、ある程度諦めて粛々とやることをやって、自分の考えや楽しみも持つおばあちゃんに憧れてたんだと思います。

 

昔からの慣例に捉われている部分ももちろんあって、古くさい価値観をいまだに大切にしているところはあるけど、その時代を生きてきたからこそ出てくる説得力もある。

 

佐藤愛子さんやうちのおばあちゃんのように、「アナザーエナジー展」で出会った世界中のおばあちゃんたちからも、人間にとって大切な本質のようなものを教わった気がします。