先日、埼玉県・東所沢にある「角川武蔵野ミュージアム」に遊びに行ってきました。1日たっぷり楽しんできたので、みどころや開催されていた展示のレビューを残します!
もくじ
隈研吾さんの建築「角川武蔵野ミュージアム」
角川武蔵野ミュージアムにいってきました。事前にニコ美で下調べをしようと思ったら、まさかの隈研吾さんご本人が建築の解説をされていて、贅沢な下調べとなりました。(非会員でも無料で観られるので、これから行く予定のある方はぜひ!)
地面からニョキっと生えているような建築デザインで、実際目の当たりにすると建物が地から栄養を受けて息をしているような躍動感を感じました。下から見上げると、せり出ている壁面が迫ってくるようで、少し怖くもあります。
壁面に敷き詰められた石のプレートは6〜7センチほどの分厚さがあり、表面は砕かれた不揃いなままに張り付けてあります。凹凸があるからか重量感があって、光にあたるとキラキラして、とてもキレイ。
鴻池朋子さんの作品「皮トンビ」
壁面には鴻池朋子さんの作品「皮トンビ」が羽ばたいています。
アーティゾン美術館の特別展示で見たときには、屋内だったから窮屈そうだったのですが、角川武蔵野ミュージアムの壁面では、自由に羽ばたいているようでうれしくなりました。
石造りの建物だけを見ていると、厳かで敷居高そうな雰囲気なのだけど、「皮トンビ」がそこにいることで親近感がわきます。
「アートは誰にでもひらかれているものだよ、おいで、おいで」と入口に誘われるかのような!
5階建ての広々した空間【椅子がヤバい】
5階建てで、2階がエントランスになっています。エントランスには、背面に「PEACE」の文字が彫られた奈良美智さんの作品がありました。
1階は特別展示&角川の漫画が読めるコーナー、4〜5階は大規模なブックフロア&一部特別展示&レストランになっていました。(3階はまだ改装中(?)で見られず・・)
とにかく広い。それに、自分がいまどこにいるのかわからなくなる。迷路みたいな夢の中みたいな面白い場所です。
ちなみに、館内の椅子やパーテーションなどもすべて隈研吾さんのデザインなのだそう。
たとえばこちらの椅子の手すり部分は「女性の柔らかい肌質」をイメージして、なめらかに削られているそう。すべすべしたやさしい触りごこち。
これから行かれる方は、ありとあらゆる椅子に座ってみてください。座ればわかる、椅子が全部凄いです!
荒俣宏さんの妖怪展示
まずは1階で開催されている荒俣宏さんの特別展示からみていきます。
北海道〜沖縄まで、各地の妖怪図鑑や、妖怪の爪・ミイラ・剥製など、奇妙で愉快な展示が続きます。
荒俣宏さんのメモ書きとともに、妖怪に関するお宝グッズが入っている段ボールの展示にグッときました。
誰かが仕込んだ段ボールを覗く行為そのものが、見てはいけないものを見るような感覚で面白いとおもったし、段ボールに雑多な感じでお宝が入っていることにワクワクしました。
件(くだん)のミイラ?!? 見せもの小屋にいたとの解説があって心が痛みましたが、私はこのミイラを見てなんだか勇気をもらえた気がしました。
件には未来が見えていて、予言を伝えるというお役目を果たしていたのに、人間には好奇の目で見られていたのかと思うと、なぜか泣きそうになりました。
お気に入りの妖怪
ここで、お気に入りの妖怪を一部ご紹介します。
画像の3つをピックアップしました!
親近感わく系の妖怪から実際にいたらゾクゾクする感じの非現実的な妖怪まで3匹(妖怪の単位「匹」であってる?)を選びました。
妖怪展示がズラリ
妖怪が出る部屋で写真を撮れる、インスタ映えスポットもありました。
丁寧な暮らしをする妖怪の絵もありました。(カワイイ)
個性豊かなお面が一面に貼られた壁は見ているの本当に楽しかったです。見れば見るほどに、好きな面が増えていくから不思議です。
全部の面に個性があって、一つひとつじっくり味わって見ておこうと目に焼き付けました。
妖怪は人間の化身?
今まで気づかなかったけど、私は妖怪が結構好きだと思います。(どちらかというと幽霊の方が好きだと思っていましたが)妖怪の方が幽霊よりも可愛げがあって、実は人間に近い存在なのかもしれないと思ったからです。
幽霊は繊細であまり表に出てこないですが、(出てくるとしても1人のときを狙ってチョロっと)妖怪はしばしば人間界にきては、堂々と顔出ししているようです。
昔の人は、都合の悪いことがあったときに妖怪のせいにすることで、肩の荷をおろしてきたのかもしれません。
妖怪って怖いけど、本当にいたらワクワクする存在でもあるから。
何か不都合なことがあったときに、「もしや、妖怪のしわざ・・?」と思うことで心が軽くなるの、わかる気がする。
妖怪展示の最後には、地元・東所沢の小学生が描いた妖怪イラストと、その妖怪の特徴を紹介するブースがありました。
東所沢の名物なのか、お茶とお団子にまつわる妖怪が多かったんだけど、それぞれの妖怪の特徴が発想ゆたかで最高にかわいくて、とても幸せな気持ちになりました。
妖怪っていいな。新たな妖怪を生み出す妄想って、想像力が鍛えられる行為なのではないかと思いました。
YOASOBIが紅白で歌った本棚
4階には、YOASOBIが紅白で歌った巨大な本棚があります。1時間に1回、プロジェクションマッピングで本棚に物語を投影していて、面白い試みだし美しかったです。
さすが角川の図書館、本の種類が豊富で、積まれた本を眺めているだけでもほんとうに楽しいです。普段大きくて借りられないような美術本を広げて読んでみましたが、特別な気持ちになります。
「透明標本」が美しい
こちらでも荒俣宏さんプレゼンツのちょっとした展示があります。
なかでも、きらめくガラスのなかに植物や動物を閉じ込めた「透明標本」が本当に美しくて、しばらく眺めていました。(グッズ売り場で一部購入できる模様)
骨を染め上げると、ここまで繊細に骨格がみえるものなんですね。彩りもゆたかでキレイです。私がもし死んだあとは、骨を染めて透明標本にしてほしい!(狂気)
「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」展
環境汚染によって白化した「サンゴ」を使ったアート作品。組み立てられ形づくられるサンゴは繊細で美しいけど、どこか儚げな雰囲気です。
このほかにも、蛍光色に光るシャンデリアや「最後の晩餐」の卓上を再現した作品などが見られます。
展示の規模こそ大きくありませんが、一つひとつの作品のテーマが鋭くて、考えがふくらみました。
たとえば、蛍光色に怪しげに光る巨大なクモの作品。とある街で人がバタバタと倒れ、町人のひとりが「巨大なクモをみた!クモの仕業だ!」という考えが広まるけど、実際は降り注ぐ放射能を見ており、原発事故による被ばくで亡くなっていたという物語が背景にあるそう。
原発・放射能はもちろん恐ろしいけど、間違えた意見が広がっていくことが恐ろしいと思いました。物事の本質が見えなくなるうえに、「巨大クモ」なんて迷信めいているから、話半分で聞いてしまう人もいるかもしれない。
荒俣宏さんの展示で「妖怪のせいにして心を軽くする心理がわかる」と思った一方で、「妖怪はあくまでも架空のモノ(ユニークな創造物という位置づけ)」として楽しむことが大切だと思いました。
簡単に思えるけど、不安なときに占いに行って、占い師の意見を鵜呑みにすることって誰にでも可能性あると思うし、そのくらい人間は弱くて何かにすがりたい生きものだと思うから。
こういう意味のある作品に頻繁にふれて、心を整理していく必要があるのだと思いました。
角川武蔵野ミュージアムで東所沢が好きになる
角川武蔵野ミュージアムは、地域に根付いた美術館だと思います。
都内の西洋美術館・現代美術館とかに行くと、もちろん美術館それぞれの個性は感じられるけど、地域色が強いとはそこまで感じません。
だけど角川武蔵野ミュージアムは、随所に東所沢の魅力が散りばめられていて、地元住人からも誇り高き新名所として愛されているのではないかと思います。
帰り道、角川アニメのマンホールをいくつか見つけながら帰るのもとても楽しくて、行きよりも帰りの方が、はるかに東所沢の町が好きになっていました!
夜はライトアップなども楽しめるみたいです。
すばらしいものを見たなぁ。また行きたい。おしまい。